『ダストビン・ベイビー』ジャクリーン・ウィルソン
(偕成社刊)
生まれた直後にピザハウスの裏にあるごみ箱へ捨てられた赤ん坊、エイプリル。ごみ箱ベイビーな彼女は、14歳の誕生日に自分の過去を巡る旅に出る。
これはそんな物語です。
エイプリルは自分を産んだ母親のことを想像します。何があって望まない自分を産む羽目になったのか、妊娠に親も周囲の人間も気づかないままだったのは何故か、と。どうして彼女はピザハウスの裏で自分をうまねばならなかったのか、想像し考えます。
そしてたぶん事実は、エイプリルの想像とそう遠くないところにあるのでしょう。
愛されている自信のない子供は、「愛してる」という台詞に弱いものです。それが初めて会った見知らぬ男性の言葉であっても、取り消されたくない為に体まで許してしまう。それっきり会うことも無い相手に。
ごみ箱の中に裸で放置されたエイプリルは、泣いて泣いて泣くことで、自分の命を救います。ピザ屋のバイトの少年が子猫でも捨てられてるものと思いこみ、ごみ箱に手を突っ込んで拾ってくれたので。
でも、彼女を引き取って育てたいという少年の希望は叶えられませんでした。17歳で独身で学生の少年には、養父の資格は与えられませんから。
法律に従えば当然の結果ですが、その後のエイプリルの運命を思うと、お役所がもう少し融通がきいたらなぁ、という感じです。羊水と血にまみれ、へその緒もついたままのベトベトの赤ん坊を抱き上げて自分のシャツにくるんで面倒を見てくれる若者なんてめったにいませんってば!
しかもその後の14年間、彼は自分が拾った赤ん坊を気にかけ、行方を捜していた
んですから。
引き取った後で扱いが面倒と施設に返す大人より、遥かにましだったじゃないですか! ああ、いけない。これを思うと腹が立って腹が立って。
ともあれ、こんな生い立ちの少女が家族と呼べる存在を得るまでのお話です。
問題児のレッテルを貼られ、怒ったり泣いたりしながらでも生きようとする少女の物語。子供時代に読みたかった作品です。