『おしゃべりな手紙たち』ポーラ・ダンジガー&アン・M・マーティン
(早川書房刊)
いまどき文通なんてはやらない。そう思われるかもしれません。
でも両親が17歳の時に生まれた子供であるタラは、自分の携帯も自由に使えるパソコンも持っていませんでした。もちろん長距離電話なんてかけられません。ええ、めったに。なにしろタラの家はいつでもお金がないのです!
だからタラの小学校時代の親友であるエリザベスは、中学に入学した最初の日、彼女の引っ越し先へ手紙を書きました。こうして二人の長距離恋愛ならぬ長距離友情は始まったのです。
エリザベスは裕福な家庭の子女で長距離電話もかけられない訳ではないのですが、母親はともかく父親の方は、タラとタラの両親を貧乏人と見下し、自分の娘が付き合う相手としてふさわしくない、と考えてます。そしてエリザベスの母親は、夫に逆らうことができません。彼女とエリザベスは似たもの親子なのです。タラ相手に長距離電話をかけた場合、フォローはしてもらえないでしょう。
けれど、エリザベスの父親がリストラされた事によって状況は一変します。今まで働くことを許されなかった母親は就職を決め、家を売り払う事にします。一方父親の方は見栄はりで、収入がなくなったのにこれまで以上に買い物をしたり贅沢をしたり。
そしてタラの家庭にも変化が現れます。これまで定職になかなかつかず、就職してもすぐ失業していた子供のような両親が、まともな親に変わろうとし始めたのです。でもタラは、その状態にとまどうばかり。どうなってるの? と。
二人の少女の手紙のやり取り、といった形をとったさわやか青春小説です。
一読はしてもいいと思います。正反対な性格と育ちの二人の友情が長続きしますように!