『冒険のはじまりしとき』タモラ・ピアス
<PHP研究所刊>

 女騎士・アランナシリーズの第1巻です。
 10歳のアランナは騎士を夢見る女の子。一方双子の兄トムは、騎士の素質は全くなく、自分の才能を活かせる魔法使いになりたいと願っている。
 だのに子育てに無関心な本の虫の2人の父親は、トムに騎士としての教育を、アランナは修道院に送り貴婦人教育を受けさせようとする。2人の意志は完全無視で聞く耳を持たない。
 納得の行かないアランナは、双子である事を利用し、兄と入れ替わって従者見習いになるのだが……。
 いやもう、しなくてもいい苦労を山ほど背負います、主人公のアランナ。まず小柄な女の子であるが故に、年上のいじめっ子な根性曲がり少年に弱い奴と見なされ、絡まれ殴られ苛めをえんえん受け続けます。
 当然まわりの人間はこの事態に気づきますが、騎士を目指してるアランナはどんなに怪我をしようと告げ口をよしとしません。骨折してもです。自力でこの卑怯者に勝てるようにならなければ、騎士の座など望めないと思っているのです。
 次にアランナが苦労するのは、もちろん女の子とばれないように暮らす事。これがまた大変です。着替えも入浴もハラハラドキドキで、水浴びの誘いは何がなんでも断らねばなりません。胸がふくらんでくれば麻布でギリギリ巻いてふくらみを隠します。
 しかし、母親を知らないアランナは、女性として身体が大人になるという事がどういう事か全くわかっていませんでした。初潮に驚愕し、怪我した訳でもないのにこの出血は何? 自分は病気なのとパニックに陥ったアランナは、遂にある人物に女の子である事実をばらし、協力を求めるのですが……。
 この巻でのアランナは13歳まで成長します。そして自分の剣を手に入れ、様々な困難を乗り越えた末に王子の従者に任命されるのです。
 でも、ある都で王子の命を守ろうと戦った際に素っ裸にされてしまい、少女である事がばれちゃうんですよね、王子に。
 それで彼女がどうなったか、は実際に読んでのお楽しみという事で♪ 陰謀渦巻く剣と魔法の冒険物語。ちょっと違うのは戦う騎士が女の子で、守られる側の人間がお姫様ではなく年上の王子様だって事。戦う女の子の成長物です。